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養護老人ホームとは?費用や入所条件などを分かりやすく解説

「養護老人ホーム」とは、自宅での生活が困難な方を支援する高齢者施設です。経済的な問題などで、社会生活を送れなくなった方が主に利用します。経済的支援と生活相談を中心に、様々なサービスを提供。入所している方を、社会復帰させるのが目的です。最低限の生活を保障するため、重要な役割を担う養護老人ホームですが、施設について理解している方は多くありません。養護老人ホームの特徴を理解しておくと、いざ必要になった際にスムーズな入所ができます。

養護老人ホームとは何か?

社会復帰が目的とする施設

養護老人ホームは、在宅生活が困難になった高齢者を養護する施設で、収入がなく生活に困っている方、身寄りがない方の支援を実施。主な目的は社会復帰です。一時的に経済的な援助や生活支援を行って、在宅生活へ戻れるようにサポートします。

実際に多い養護老人ホームへの入所理由は、以下の通りです。

  • 介護を行っていた家族が急に亡くなって、ひとりで生活できない
  • 一緒に生活している家族から虐待を受けている
  • 年金収入、貯金がなくて生活ができない
  • 他の介護施設へ入所が求められるが、空いている施設がない
  • 住む場所がなく路上で生活している

養護老人ホームは、主に一時的な支援が目的とされるため、介護サービスは受けられません。養護老人ホームでは、健康チェック、食事、機能訓練、経済面の相談といったサービスを提供しています。なお、身体介助などの介護が必要になった場合は、外部の介護事業所と契約する必要が存在。また、他の高齢者施設のように長期にわたる入所はできず、一定期間経過すると退去しなければなりません。

養護老人ホームと特養(特別養護老人ホーム)の違い

養護老人ホームとよく混同される施設に、「特別養護老人ホーム」(特養)があります。養護老人ホームとの違いは以下の通りです。

養護老人ホームと特養の違い
養護老人ホーム 特別養護老人ホーム
目的 様々な理由で在宅生活が困難な高齢者を養護し、社会復帰を目指す 介護が必要な高齢者に対して、生活支援、身体介護を行う
サービスの内容 ・自立支援、社会復帰の支援
・介護保険の適用なし
・介護、生活支援
・介護保険を適用
入所の基準 ・65歳以上
・日常生活に介護を必要としない高齢者
・65歳以上
・要介護度3以上の高齢者
入所の難易度 市区町村が調査し、決定する 入所希望者が多く、数ヵ月待つ場合もある
部屋のタイプ 多床室、個室 多床室、個室
月額利用料 0~14万円 8~13万円
設備 居室、食堂、トイレ、
浴室
居室、食堂、トイレ、浴室

養護老人ホームと特養との大きな違いは入所目的、入所の基準、提供されるサービス内容にあります。特養は介護が必要な高齢者を対象に、恒久的な介護と支援をするのが目的。また、入所基準においても要介護認定を受ける必要性があり、介護保険制度を適用した施設なのです。

養護老人ホームの入所条件・対象者

養護老人ホームの入所条件は、在宅生活が様々な要因によって困難となっている、かつ介助を必要としない高齢者となっています。特徴を理解するために、入所条件・対象者について詳しく見ていきましょう。

入所条件

在宅生活で問題を抱えた高齢者が対象

養護老人ホームの入所条件は、基本的に以下の3つです。

  • 65歳以上の高齢者
  • 自立していること
  • 経済的、環境的な問題を持っている

このように、養護老人ホームに入所する方は、65歳以上で要介護状態ではない方。施設内では介護支援が提供されないため、食事や入浴、家事などにおいて自立していることが条件になります。また、社会福祉を目的とした施設なので、経済的問題や家庭環境などによって在宅生活が困難な方が対象。なお、生活が困難であるかどうかは、自治体の判断にゆだねられます。住んでいる地域の財政状況や施設数によって受け入れ基準が変動するため、事前の確認が必要です。

具体例として、東京都高齢者福祉施設協議会では、以下のような基準を入所条件として設けています。

東京都高齢者福祉施設協議会で定められた入所条件
環境 ・入院加療を要する状態でないこと
・家族や住居の状況などにより、在宅において生活することが困難
経済状況 ・本人が生活保護世帯であること
・本人、及びその方の生計を維持している方が非課税世帯であること
・災害、その他の事情により、生活の状況が困窮した世帯

このように養護老人ホームは、希望者全員が入所できる施設ではありません。一定の条件を満たし、自治体によって措置が必要と判断された方だけが入所できるのです。

養護老人ホームの費用

養護老人ホームは、収入が少ない方でも利用可能な施設。費用面について「初期費用」、「月額利用料」に分けて解説します。

初期費用

養護老人ホームは、入所時に初期費用の支払いがありません。入所一時金や敷金などは不要です。経済的に問題がある方の支援が目的なので、初期費用が免除されています。

月額利用料

養護老人ホームにかかる費用

月額利用料は前年度の収入によって決定され、1ヵ月あたりの費用は、0~14万円です。収入から社会保険料、医療費などを控除した金額が利用料となり、生活保護を受給している方や被災者などの場合は利用料が免除されます。なお、前年度の収入に基づく月額利用料は39段階で設定され、収入が年間27万円未満であれば無料です。

収入ごとの月額利用料の例は以下の通りになります。

収入別の月額利用料の例
前年度の収入 月額利用料
0~27万円 0円
44~46万円 1万4,100円
72~76万円 3万7,500円
144~150万円 8万1,100円

39段階によって月額利用料は異なりますが、最大でも8万1,100円です。

養護老人ホームのメリット

養護老人ホームのメリットは、以下の3つになります。

1入所費用を抑えられる
社会復帰を目的とした支援

養護老人ホームは、少ない費用で利用可能です。入所時の費用負担はなく、月額料金も他の施設と比較して安く設定。入所時の金銭的負担が少ないため、経済状況が苦しい方が入所できる点に最大のメリットがあるのです。

また、生活保護を受けている方、被災した方など特別な事情がある場合は、利用料の免除・減額が適用されることも。収入などの問題で高齢者施設の利用ができない方にとって、費用負担が少ない養護老人ホームは、最低限度の生活を守られる福祉施設とされています。

2経済的な支援が受けられる

養護老人ホームでは経済的な支援が受けられ、社会復帰まで最低限度の生活を保障。例えば、入所者には住居費や生活費、医療費の支給があり、日用品や食事も支給されるため、追加で費用を負担する必要がありません。初期費用や月額利用料の安さ以外に、生活費を支援してもらえる点もメリットです。

3緊急時の対応が可能

養護老人ホームは、緊急時における対応も可能。施設内にはスタッフが、夜間でも必ず1人常駐しており、安否確認と見守りを行っています。ただし、養護老人ホームのスタッフは支援員であるため、専門的な身体介助は行えません。

養護老人ホームのデメリット

養護老人ホームには押さえておくべきデメリットもあります。具体的には以下の3点です。

1自治体の審査が必要
養護老人ホームのデメリット

養護老人ホームに入所する際は、前述の通り、住んでいる地域における自治体の審査を通過しなければなりません。入所を希望する方が全員入所できる訳ではないのがデメリットです。審査の基準は各自治体によって異なり、同程度の問題を抱えていても、自治体によって審査結果が同じになるとは限りません。

また、自治体によって異なりますが、入所の優先度は緊急性の高さによって決まります。さらに地域の施設数によっても入所の難易度は変動。この先、利用する可能性がある方は、住んでいる自治体の施設数、受け入れ状況について事前に確認しておきましょう。

2長期の入所ができず、退去の可能性がある

長期の入所ができない点も、養護老人ホームのデメリット。高齢者の社会復帰を目的としているため、長期間の入所を前提としていません。そのため、設備やスタッフの配置も最低限となっており、定められた期間内での利用が一般的です。また、基本的に自立している高齢者が入所の対象者となるため、入所中に介護度が悪化した場合は退去を命じられることも。よって、定められた期間内であっても施設に居られるとは限りません。

3介護が受けられない

養護老人ホームでは介護支援が受けられず、社会復帰を目的とした支援のみです。身の回りのことは自分で行う必要があります。日常生活を送るのに介助が必要な方は、外部の介護事業所を利用しなくてはなりません。身体介助などに関する設備、体制が不十分な点はあらかじめ理解しておきましょう。

養護老人ホームに入所するまでの流れ

養護老人ホームに入所するためには、住んでいる自治体の許可が必要です。養護老人ホームへ入所する流れは、以下の4つに分けられます。それぞれのポイントを押さえておくと、スムーズな手続きが可能です。

1自治体の担当窓口に相談する
養護老人ホームへの入所手続き

養護老人ホームを利用するには、公的機関の担当窓口へ相談をします。相談ができる窓口は、以下の3つです。

  • 市区町村の福祉課
  • 居宅介護支援事業所
  • 地域包括支援センター

養護老人ホームは、希望する人が誰でも利用できる施設ではありません。入所の基準を満たしており、市区町村の審査をクリアした人が入所できます。自治体にある施設数や入所状況によって審査の難易度は様々。該当機関にて相談を行うと、自分が置かれている状況から、養護老人ホームへ入所できる可能性を教えてくれます。まずは、公的機関の窓口へ相談するところから始めましょう。

2必要書類を準備し、申請する

自治体の公的機関において、養護老人ホームへの入所条件を確認したあと、入所の申込みを行います。申請は、本人もしくは家族が実施。必要な書類は自治体のホームページなどで確認、入手できます。なお、必要書類の種類は自治体によって異なるため、要注意です。ここでは例として、兵庫県相生市における必要書類を挙げます。

必要書類 概要
入所申請書 入所を希望する理由を具体的に記載
身元引受書 身元を引き取ってくれる方を保証人とする
老人ホーム入所対象者
診断書
医師の診断書が必要
住民票 申請者本人の住民票に加え、身元引受人が別の世帯の場合は引受人の住民票も必要
戸籍謄本 申請者本人の戸籍謄本に加え、身元引受人が別の世帯の場合は引受人の戸籍謄本も必要
健康保険証のコピー 身体障害者手帳を持っている場合は併せて提出が必要
申請者の収入が分かる書類 源泉徴収書、確定申告書などの書類を準備
本人の課税状況が
分かる書類
税務署が発行する所得課税証明、所得税がある場合は確定申告書の写し
扶養義務者の経済状況が
分かる書類
配偶者や子の所得課税証明と所得税がある場合は確定申告書の写し
家系図 所定のファイルに申請者本人の家系図を記入
収入調査同意書 所定の同意書に必要事項を記入

必要な書類を準備し、自治体の担当窓口まで提出すれば、入所申請の手続きは完了です。

3訪問調査など審査を受ける

自治体へ養護老人ホームの入所申請が完了したあと、自治体の担当者による訪問調査、及び審査が実施されます。日程を調整し、申請者の自宅を訪問し、本人の実態を調査。訪問調査では、在宅生活における困難さを身体状況、環境面、経済面などから評価します。自治体の担当者が正確に実態を把握できるようにするため、自身の状態を過不足なく伝えるのが大切です。訪問調査のあと、調査結果をもとに、入所判定委員会とサービス調整会議によって養護老人ホームへの入所の可否を決定します。

4養護措置を受け入所

入所判定委員会での審査の結果において養護措置が必要とされた場合、養護老人ホームへ入所。養護措置を受けたあとは、養護老人ホームへの入所日の調整が必要です。養護措置の決定は施設に自治体より直接伝えられるため、日程の調整は養護老人ホームと入所者本人が直接行います。

養護老人ホームの手続きは、必要書類の入手から作成、提出が必要であり、自治体による違いも存在。自分で調べても分からない点が少しでもあれば、役所、あるいは介護の相談窓口となる、地域包括ケアセンターなどで相談してみましょう。

まとめ

養護老人ホームは、自宅での生活が難しい高齢者を支援するための施設です。経済的問題や虐待などで自立が困難な方が利用し、自立や社会復帰の支援が提供されます。利用料金が抑えられ、経済的な支援を受けられるのもメリット。一方で、他の高齢者施設と異なり、介護サービスが提供されないのがデメリットです。また、養護老人ホームへの入所には審査が必要とされ、困窮している方全員が入所できるわけではありません。最低限の生活を維持するための福祉サービスになるため、利用したい方は自治体の窓口で相談してみましょう。

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