単身でも入居できる高齢者向け優良賃貸住宅とは?
「高齢者向け優良賃貸住宅」とは、家賃補助制度がある他、高齢者にとって暮らしやすい環境を揃えた住宅のことです。高齢者の総人口増加によって人気の高い高齢者向け優良賃貸住宅ですが、2011年(平成23年)に「高齢者の居住の安定確保に関する法律[高齢者住まい法]」が施行されたことで廃止。代わりに「地域優良賃貸住宅制度」という新しい制度が登場しました。「単身でも入居できる高齢者向け優良賃貸住宅とは?」では、改正前の高齢者向け優良賃貸住宅に関する、相場費用、入居条件、サービス、設備について紹介します。
高齢者向け優良賃貸住宅とは?
「高齢者向け優良賃貸住宅」制度は現在廃止されている

2011年(平成23年)に、「高齢者の居住の安定確保に関する法律[高齢者住まい法]」が改正。これによって、「高齢者向け優良賃貸住宅制度」は廃止されました。
しかし、新たに「地域優良賃貸住宅制度」として改訂され、同様の制度が施行。この新しい制度によって、高齢者だけではなく、地域住民に関する住居の、より体系的な制定が行われました。過去の制度よりも改善された保障などが追加され、超高齢社会に適した制度が施行されています。
家賃補助が出る場合もある
高齢者向け優良賃貸住宅は、高齢者にとって暮らしやすいよう、住居設備に配慮しているだけではなく、一定以下の所得の方には家賃補助を行う措置が存在します。家賃補助の制度は、政府が事業者を通じて施行した「高齢者の居住の安定確保に関する法律」によるもの。
自治体によって家賃補助の限度額や、対象となる方には差異があります。以下は、神奈川県横須賀市の例です。
高齢者向け賃貸住宅における家賃補助(神奈川県横須賀市) | ||
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入居者の所得 | 収入分位 | 基準値 |
12万3,000円以下 | 10%以下 | 6万2,000円 |
12万3,000~ 15万3,000円 |
10~15% | 7万円 |
15万~18万円 | 15~20% | 7万6,000円 |
18万~20万円 | 20~25% | 8万1,000円 |
20万~24万円 | 25~32.5% | 8万8,000円 |
24万~27万円 | 32.5~40% | 9万5,000円 |
月額の所得が低ければ低いほど、高齢者向け優良賃貸住宅に支払うべき家賃総額が減少するため、自治体への相談が必要。市区町村によっては、家賃総額の半額を負担してくれる場所もあります。
高齢者向け優良賃貸の費用
初期費用

初期費用を政府が負担してくれる制度もあり、その価格帯は市区町村によって様々。地域によっては初期費用・敷金が無料となる場合もあります。
一方で、家賃3ヵ月分の初期費用が必要な場所も存在。平均的な家賃3ヵ月分だと、30万円ほどの額が必要になります。一般的には、都市部に近いほど初期費用の額が高くなる傾向です。
家賃
高齢者向け優良賃貸住宅の家賃の相場は7~13万円。バリアフリーや、高齢者のために考案された設備が導入されていますが、一般的な賃貸住宅と価格の差異はありません。家賃に関して、入居者の所得額に応じた家賃補助制度を行っている地域もあり、実際の家賃よりも費用を抑えることも可能です。
介護サービス費
一般的な介護サービス費は5万円ほどです。しかし、国や自治体が介護にかかるサービス費用のほとんどを負担してくれることが多く、実際に支払う月額の介護サービス費は6,000円ほどとなります。要介護レベルによって、この費用は変動するので注意が必要です。
共益費
共益費とは、高齢者向け優良賃貸住宅にかかわる様々な設備の保全、点検、修理のために用いられる費用のことを指します。特に、建物の共用スペースを維持するために必要不可欠。一般的な共益費は月額5,000~8,000円ほどです。
高齢者向け優良賃貸の入居条件
高齢者向け優良賃貸住宅の入居条件は、お住まいの市区町村によって差異があります。ここでは一般的な入居条件について見ていきましょう。
一般的な入居条件の例
以下が一般的な入居条件の例です。
- 1単身入居者の場合、入居者の年齢が満60歳以上であること。
同居者がいる場合、入居者と血縁関係があり3親等以内かつ60歳以上の方。配偶者も入居可能。 - 2入居者が、当該の高齢者向け優良賃貸の地域に住民票を持っていること。
- 3自立した日常生活を営める能力を持つ方。
同居者の支援を得ることで生活が営める場合も可。 - 4住民税を滞納していない方。
- 5世帯合計月収が38万7,000円以下の方。
(市区町村によっては世帯合計月収が48万7,000円以下の条件を設けている場合も)
以上の5項目が、一般的な高齢者向け優良賃貸住宅に関する入居条件の一例となります。
入居に関する難易度
高齢者向け優良賃貸住宅は、入居難易度は高めです。住宅数が不足し、限りがあるため、入居するにはある程度の時間が必要となります。加えて、年々増加する高齢者の数によって、入居に関する倍率も上昇し続けており、入居難易度は高くなっているのです。入居者の募集方法は、主に抽選形式が採用されており、倍率の高い高齢者向け優良賃貸住宅の抽選を突破する必要性もあります。
市区町村や事業者によっては、特定の入居者にのみ優先して入居を認めてくれるケースも存在。そのため、時期が合えばすぐに入居できる場合もあります。
高齢者向け優良賃貸のサービス
高齢者向け優良賃貸では、大きく分けて2つのサービスを利用することができます。①「緊急時対応サービス」と②「安否確認サービス」です。有料ですが、入居時に①緊急時対応サービスの契約が必須。どちらも高齢者のために考えられたサービスであるため、両方契約するのが最善と言えるでしょう。
- 1緊急時の対応サービス
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緊急時の対応サービスは、万が一の事態に、住居内にある緊急通報装置を利用することで、提供業者からの支援を受けることができるサービスです。事故や病気などの緊急時に、状況に合わせた対応を行ってくれるのが特徴。生死にかかわる事態には、救急車に連絡をしてくれます。加えて、通報装置が作動した際に、遠方に住む親族の方にも報告をしてくれるため、離れて暮らす親戚も安心です。
- 2安否確認サービス
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安否確認サービスは、住居内に設置した特殊なセンサーを通じて、住居者に何か異変があった際に自動的に報告してくれるサービスのこと。コールセンターや提携業者に連絡があったあと、すみやかに安否確認をしてくれます。近年、高齢者の一人暮らしが多くなっており、有事の際には自分で連絡することができない事態が多々発生。高齢者が体調不良によって動くことができない場合、自分から通報するのは困難を極めるため、有事の際に役立つサービスと言えるでしょう。
安否確認サービスは、生活リズムが大きく崩れた際に、特定のサインを検出することで自動的に報告をしてくれます。契約には費用が発生し、契約するのも自由ですが、高齢者が1人で暮らす場合には加入するのがおすすめです。
高齢者向け優良賃貸の設備
一般的な賃貸住宅と比べて、バリアフリーに特化している設備があることが、高齢者向け優良賃貸の特徴。エレベーターが完備されている他、階段の段数の削減、階段の斜角度を抑えた造り、手すりの完備によって、高齢者でも行き来しやすい通路が確保されています。
一部の高齢者向け優良賃貸住宅では、いつでも利用できるお湯設備が完備されており、火傷防止の配慮も存在。一般的な賃貸住宅と内装設備は変わりありませんが、高齢者が利用しやすい高さの手すり、キッチン、棚、机、椅子などが完備されています。
まとめ
高齢者が住みやすい環境を揃えた高齢者向け優良賃貸住宅ですが、2011年(平成23年)に廃止されており、代わりに地域優良賃貸住宅制度という新しい制度が導入されています。改正前の高齢者向け優良賃貸住宅は入居条件に関しても規定があり、お住まいの自治体に相談することが大切です。時期によっては優先的に入居できることもあり、入居難易度は変動。入居する際には、自身がどの収入帯に位置するのかを明確にします。