在宅介護の現状と問題点|家族が限界を感じた場合の対策も解説
在宅介護は、少子高齢化により様々な問題が生じています。2025年(令和7年)には介護の財源と人材不足が予想されており、早急に解決すべき重要なポイントです。在宅介護に関する問題は、自分と家族にほぼ確実に訪れます。ところが、自分が介護をする立場・される立場になった際に、何が問題になるか把握できている方は多くありません。在宅介護の現状と問題点を理解しておくと、実際に介護が必要になった際に適切な準備と対処が可能です。
在宅介護の現状

団塊の世代が後期高齢者になることで生じる「2025年問題」は、在宅介護においても解決すべき重要な課題となっています。
高齢化の進行によって、在宅介護を行う人は増加傾向です。厚生労働省の調査結果によると、令和5年(2023年)1月に在宅で介護サービスを受けた人数は、およそ413万人に及びます。
2025年問題について、少子高齢化の進行は分かっていても、具体的な問題を把握していない方が多いのが現状です。在宅介護の現状と、2025年(令和7年)に生じると予想される問題について解説します。
介護にまつわる2025年問題
介護にまつわる2025年問題は、以下の3つです。
- 1財源の不足
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少子高齢化の進行によって、介護保険制度を担う財源の不足が深刻な問題に挙げられています。介護保険制度の財源となるのは、税金や保険料です。今後、少子化により財源の確保が困難になる一方、在宅介護を必要とする高齢者は増加し続けます。
- 2介護人材の不足
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厚生労働省の調査によると、2025年(令和7年)に求められる介護人材の想定数は253万人です。しかし、現在の見通しでは、およそ38万人の介護人材が不足するとされています。介護業界は過酷な業務内容に反して給与水準が低く、人材確保が困難です。そのため、介護業界では2025年(令和7年)に向け、待遇の改善を行い、人材の確保に努めています。
- 3介護難民の増加
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人材の不足に伴い、「介護難民」が増加するのも問題です。人材不足によって、必要なサービスを受けられない介護難民の増加が予想されています。例えば、介護施設では入居希望者が多く、数ヵ月の順番待ちが続くケースも珍しくありません。介護難民の増加に備え、人材の確保や、施設数の増加が急務となっています。
高齢者の在宅介護に関する希望
在宅介護を行うにあたって、高齢者がどのようなことを希望しているのか理解しておくことが重要です。様々な機関が行った調査から、高齢者が在宅介護に望むことの傾向が明らかになりました。最期を迎えたい場所や、どのような介護を受けたいのかを中心に解説します。
人生の最期を迎えたい場所で最も望ましいのは「自宅」
日本財団の調査結果によると、人生の最期を迎えたい場所で最も望ましいのは「自宅」でした。自宅が望ましいと考える理由は、住み慣れた場所で、自分らしくいられるから。自宅の次に多い回答は「医療施設」で、安心感があることが理由として挙げられています。
なお、家族が被介護者を自宅で看取る際の懸念点は、「何をすべきか分からない」と「どのくらい期間があるのか不明」の2点です。人生の最期を住み慣れた自宅で迎えたいと願う高齢者が増えている一方で、在宅介護を担う家族の不安が多く見られるのが現状だと言えます。
避けたい場所は「子の家」「介護施設」
日本財団の調査結果では、人生の最期を迎える場所として避けたい場所は、「子の家」と「介護施設」でした。親世代は、家族の負担にならないように「子の家」を避けたいと考えていることが予想されます。また、「介護施設」は様々な制約があり、自分らしい生活ができないことが、避けたい場所の上位に挙がっている理由です。
人生の最期を迎えるにあたって、多くの人が家族に負担をかけるのは避けたいと考えています。その一方で、自分らしい生活を送れない施設での最期を望まない人も多いのです。
介護をプロに任せたい人が増えている
2022年(令和2年)に公表された内閣府の調査によると、介護が必要になった際は、介護サービスのプロに任せたいと考える方が46.8%でした。次いで配偶者が30.6%、子が12.9%となっています。前回の調査結果(2017年)では、配偶者が最も多く36.7%、次いで介護サービスの人が31.5%でした。
近年、介護サービスが普及・拡大しており、以前と比較して介護サービスが身近なものになっています。被介護者の意識の変化、介護サービスの普及によって、介護を家族ではなく、プロに任せたいと考える人が増えているのです。
在宅介護の問題点
在宅介護で特に問題となるのは、以下の2点です。
- 1介護者の負担が大きくなりやすい
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在宅介護の1番の問題点は、介護者の負担が大きくなりやすいこと。在宅介護の主な担い手は、近所もしくは一緒に住んでいる家族です。
主に以下のような介護が、日常的に求められます。
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴介助
食事介助では、被介護者の嚥下機能(えんげきのう:食べ物を飲み込み胃へ送る機能)に合わせた食材の加工や、調理方法の工夫が必要です。排泄介助や入浴介助は、身体的な負担が大きく、慣れや技術が必要になります。
在宅介護は、精神面や時間面で介護者の負担が大きいのも特徴です。仕事や育児との両立が困難で、在宅介護を原因に離職する人もいます。生活リズムを被介護者に合わせる必要があるため、自分の時間の確保が困難になってしまうケースが多いです。身体的な負担に加えて、精神面や時間面の負担も在宅介護では問題になります。
- 2費用の負担が大きくなること
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在宅介護では、費用負担の大きさも懸念すべき問題点です。在宅介護で利用する介護サービスは、介護者の身体的負担を軽減できますが、経済的な負担が生じます。
在宅介護では、介護サービスだけでなく、オムツなどの消耗品の費用負担も必要です。また、被介護者が生活しやすいように、住宅改修や福祉用具の購入を行うと、負担する費用はさらに大きくなります。特に、急な病気や怪我からの退院直後で介護が必要な場合は、福祉用具を揃えるなど、介護環境を整えるために出費がかさむことも。在宅介護では、身体的な負担だけでなく、経済的な負担が生じることも覚えておきましょう。
在宅介護に限界を感じたら
在宅介護は介護者に大きな負担がかかります。介護疲れが原因で体調を崩してしまう方も少なくありません。在宅介護に限界を感じた場合の対策として、以下の2点が挙げられます。
- 1ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する
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在宅介護に限界を感じたときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することが重要です。ケアマネジャーに相談すると、負担のかかる介護を代行してもらえるサービスや、支援制度の紹介をしてもらえます。
また、地域包括支援センターに相談するのもおすすめ。地域包括支援センターは、地域の高齢者が自立した生活を送れるように支援を行っている施設です。認知症の介護をはじめ、在宅介護に関する様々な悩みについて相談できます。
- 2施設への入居を検討する
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在宅での介護に限界を感じたら、施設入居も検討が必要です。病気が進行して動けなくなったり、認知症が進行して会話ができなくなったりすると、在宅で介護を行うのが困難になります。家族の支援や介護サービスを利用しても対処しきれない場合は、施設への入居も選択肢のひとつ。介護が必要になった方が入居できる施設は、以下のような場所が挙げられます。
施設によって入居対象者や提供サービスが異なるため、本人の身体状況や家族の意向に沿った施設かどうかを考慮することが重要です。
まとめ
少子高齢化による財源と人材の不足が、在宅介護の主な課題として挙げられています。少子高齢化による課題は「2025年問題」として深刻化が予想され、介護負担や経済的負担の増大は避けられません。介護が必要になる前に、現状と問題点を理解しておくと、適切な準備や対処が可能です。また、在宅介護が困難なときに使えるサービスや支援の把握は、介護負担の軽減に役立ちます。