在宅介護サービスの種類・特徴、利用方法を解説
在宅介護サービスには様々な種類があります。訪問型から通所型まで、それぞれ特徴があるため、状況にあったサービスを選ぶのが重要です。しかし、介護経験のない方が、要介護者の状況に合わせて在宅介護サービスを選ぶのは、簡単ではありません。失敗しないためにも、在宅介護サービスの特徴や利用方法について、詳しく知っておきましょう。
在宅介護の種類一覧
在宅介護をサポートするサービスは複数の種類があります。具体的なサービス内容とそれぞれの特徴は、以下の通りです。
在宅介護サービス一覧 | ||
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種類 | サービス | 特徴 |
訪問型サービス | 訪問介護 | 日常生活のサポート 全般的な生活援助を行う |
訪問入浴介護 | 自宅での入浴介助 入浴時に必要な健康管理も実施 |
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訪問看護 | 在宅で医療ケア 定期的な健康観察も行う |
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訪問リハビリテーション | 生活に根差した機能訓練 自宅の環境整備に関する助言 |
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夜間対応型訪問介護 | 夜間の定期的な介護 徘徊やトイレ介助などを支援 |
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定期巡回・ 夜間対応型訪問介護 |
夜間に必要な介護に加えて、看護師による医療ケア | |
居宅療養管理指導 | 専門職スタッフによる定期訪問と在宅介護にかかわる助言 | |
通所型サービス | 通所介護 (デイサービス) |
生活介助とレクリエーション 社会参加を促進 |
通所リハビリテーション(デイケア) | リハビリ専門職による機能訓練 外出の機会も提供 |
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地域密着型通所介護 | 少人数デイサービス 手厚い介護が受けられる |
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療養通所介護 (療養型デイサービス) |
少人数デイケア 医療ケアにも対応可能 |
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認知症対応型通所介護 (認知症対応型デイサービス) |
認知症を専門とした通所介護 認知症に特化したケアを実施 |
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宿泊型サービス | 短期入所生活介護 (ショートステイ) |
短期間の宿泊と生活援助 介護者の負担軽減 |
短期入所療養介護 (医療型ショートステイ) |
短期間の宿泊と介護・医療ケア | |
訪問・通い・宿泊 を組み合わせる サービス |
小規模多機能型居宅介護 | 在宅介護に必要なサービスを包括的に提供 |
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) | 在宅介護に必要なサービスと医療ケアを包括的に提供 | |
生活環境を 整えるサービス |
福祉用具のレンタル・ 購入 |
杖やベッドなどのレンタル費用の支給 |
住宅改修費の支給 | 手すりやスロープなどの改修費用の支給 | |
介護保険外 サービス |
介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業) | 介護予防を目的としたサービス |
介護保険外サービス | 家事代行や配食サービスなど自費で受けるサービス |

在宅介護サービスは、自宅で生活している高齢者が生活を送るために必要なサポートを提供しています。
在宅介護の負担を軽減するには、個人の環境に合ったサービスを利用するのが重要です。状況に合ったサービスが分からない場合は、ケアマネジャーや専門スタッフに相談するのがおすすめ。自分の状況に適したサービスを提供してもらえます。
なお、支援内容によっては、対象者が限定されているサービスもあるため、申請前に確認しておくと安心です。
自宅で受けられるサービス(訪問サービス)
訪問サービスは、ヘルパーや看護師に自宅へ来てもらい、生活援助や医療ケアを受けられるサービスで、以下のようなサービスが代表的です。
訪問介護(ホームヘルプ)
訪問介護(ホームヘルプ)の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 | 要介護1~5 |
おすすめの人 | 心身状態の不調によって、日常生活全般に困難なことがある人 |
訪問介護は、高齢者や身体障害で生活に介助が必要な方に対して、自立して暮らすための支援を行うサービスです。介護士(ヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、日常生活に必要な介護サービスを提供します。具体的な支援内容は、以下の通りです。
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- 食事介助
- 排泄介助
- 着替え介助
- 通院の補助
- 買い物代行
- 掃除や洗濯
- 食事の準備

身の回りのことから生活環境の維持まで、幅広い支援を行うのが特徴です。
訪問介護の主な目的は、高齢者や障害者が自分の家で快適に生活を送ることの支援。けがや病気の影響で、生活に支障のある方が、長く在宅生活を送るために、訪問介護は提供されます。また、訪問介護は利用者の支援だけでなく、家族の介護負担軽減にも効果的。必要なサポートを細かく選択できるため、在宅介護を行ううえでは不可欠なサービスです。
注意点は、訪問介護では利用者本人に関するサポートしか行えないこと。本人に関係のないペットの世話や、家族の食事準備などはサービスに含まれないため、注意が必要です。
訪問入浴介護
訪問入浴介護の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 | 要介護1~5、要支援1・2 |
おすすめの人 |
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訪問入浴介護は、介護士が利用者の自宅を訪問し、入浴介助を行うサービスです。身体的な制限や浴室の環境によって、1人で入浴するのが困難な方を対象としています。具体的な支援内容は、以下の通りです。
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- 入浴のサポート
- 血圧測定
- 脈拍測定
- 体温測定
- 体調チェック
- 体重管理
入浴は心臓や血管に負担がかかるため、安全に湯船に入れるような健康管理も合わせて提供されています。訪問入浴介護は、身体制限が比較的軽度な方や、自宅での入浴に強い願望がある方に向けて提供されるケースが多いです。例えば、身体制限は軽度ですが、浴槽が深すぎる、手すりがないなど、浴室の環境が悪い場合に入浴介助が必要になります。
また、デイサービスのように、自宅以外での入浴に抵抗を感じる人は少なくありません。訪問入浴介護であれば、慣れた環境でゆっくり入浴できるため、精神的な負担が少ないのも特徴です。
訪問入浴介護は、利用者一人ひとりの希望に合わせたサポートで、身体的な健康や精神的な幸福感を向上させる役割を果たします。体の一部だけを湯に浸からせる「部分浴」や、体を拭くだけのサービスもあるため、入浴に不安がある人は、ケアマネジャーに相談してみましょう。
訪問看護
訪問看護の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 | 要介護1~5、要支援1・2 |
おすすめの人 |
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訪問看護では、看護師が利用者の自宅を訪問し、医学的な処置や健康管理を行います。定期的な通院が難しい方や、医療ケアが必要な方が対象です。訪問看護では、主に以下のサービスが提供されます。
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- 健康管理(血圧測定など)
- 健康指導
- 服薬管理
- 胃ろうの管理
- 痰の吸引
- 傷口の処置
ヘルパーが行う訪問介護と異なり、医学的な知識を要する支援が必要な場合に利用されます。訪問看護の主な目的は、利用者の健康の維持・回復です。医学的な処置や健康管理以外に、利用者やその家族への健康指導も行います。また、訪問看護を定期的に受けている場合、緊急を要する体調変化や、夜間のトラブルにも対応可能。体調の確認や救急車の出動要請まで、専門的な観点から支援を行ってくれます。
日常的な健康管理から、緊急時まで行ってくれる訪問看護は、在宅介護では非常に心強いサービス。実際の介護現場でも、在宅介護を行うほとんどの方が、訪問介護と一緒に訪問看護を導入しています。
訪問リハビリテーション
訪問リハビリテーションの概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 | 要介護1~5、要支援1・2 |
おすすめの人 |
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訪問リハビリテーションは、理学療法士や作業療法士が利用者の自宅を訪問し、機能訓練や運動指導を提供するサービスです。主に、退院直後の方や自宅にこもりがちな方など、継続したリハビリテーションが必要な方が対象になります。訪問リハビリテーションで提供される内容は、以下の通りです。
- 運動機会の提供
- 日常的に行える体操の指導
- 福祉用具の設置に関する相談
訪問リハビリテーションを行う理学療法士や作業療法士は、身体機能に関する専門職です。利用者の身体機能を評価し、最適な運動や生活環境に関するアドバイスをくれます。
訪問リハビリテーションの主な目的は、身体機能の維持や自立して行える動作範囲の拡張です。利用者の自立を促すことで、生活の質を改善させるだけでなく、介護者の負担を軽減できます。また、訪問リハビリテーションは利用者それぞれの生活環境に合わせて行えるのがメリット。病院や施設で受けるリハビリテーションと異なり、実際の生活に根差したアプローチを実施してもらえます。
夜間対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 | 要介護1~5 |
おすすめの人 |
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夜間対応型訪問介護は、深夜のトイレ介助や体位交換などの介助を、ヘルパーが訪問して行ってくれるサービスです。18時から翌朝8時までの時間に対応可能で、認知症や寝たきりなど、夜間の介護が必要な方が対象になります。夜間対応型訪問介護で提供されるサービスは、主に以下の3つです。
- 定期巡回
- オペレーションサービス
- 随時訪問
夜間に必要な介護を定期的に行ってもらえるため、家族など、介護する人の負担軽減につながります。また、病院の空いていない時間に体調不良や心配なことが生じた際に、電話やコールボタンを通してオペレーションサービスで相談することができ、とても安心です。電話で状況を把握し、問題がある場合は随時訪問してもらえます。
夜間対応型訪問介護は、認知症による徘徊や、寝たきりで夜間に特別な介護が必要になる場合に利用されるサービスです。夜間の介助は介護者にとって大きな負担になるため、要介護度の重い人がいる家庭にとって大きな支えになります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 の概要 |
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サービス内容 |
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対象者 |
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おすすめの人 |
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定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、日常的な生活支援に加えて、緊急時にも介護士・看護師が対応してくれるサービスです。1日に複数回サービスを利用する人が対象となっています。定期巡回・随時対応型訪問介護看護で提供されるサービスは、以下の4つです。
- 定期巡回サービス
- 訪問看護サービス
- 随時対応サービス
- 随時訪問サービス
定期巡回や訪問看護は、作成したケアプラン通り、定期的なケアや処置を訪問して行います。定期巡回は訪問介護とは異なり、10~15分の短い介助を1日に複数回実施。食事や排泄の介助など、生活動作の支援が中心です。
また、随時訪問サービスを行っているため、夜間や緊急時にも対応可能。電話による相談を受け、必要に応じて介護士や看護師が訪問します。訪問サービスの利用頻度が多くて限度額を超えてしまう人や、一人暮らしの認知症で薬を管理できない人などが対象です。
居宅療養管理指導
居宅療養管理指導の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 | 要介護1~5 (要支援1・2の方は介護予防居宅療養管理指導) |
おすすめの人 |
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居宅療養管理指導は、医師や薬剤師が利用者の自宅を訪問し、健康管理に関する指導やアドバイスを行うサービスです。利用者の身体状況や介護者の都合で、通院が困難な人が対象になります。提供されるサービスは、訪問する専門職によって様々。職種別の提供サービスの例は、以下の通りです。
居宅療養管理指導の職業別サービス内容 | |
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医師・歯科医 |
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薬剤師 |
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管理栄養士 |
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歯科衛生士 |
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看護師・保健師 | 療養・介護に関する相談・アドバイス |
専門職それぞれの観点から、療養生活上の指導を実施します。直接的な処置はなく、あくまでもアドバイスのみです。管理・指導の結果、詳細な検査や介入が必要な場合は、関連の病院や施設で処置が受けられます。アドバイスだけとはいえ、定期的に専門家によって体調を確認してもらえるので、病気や異常の早期発見が可能です。
施設に通って受けられるサービス(通所型サービス)
通所型サービスでは、利用者が施設に通う形で、生活支援や医療ケアを受けます。具体的なサービス内容は以下の通りです。
通所介護(デイサービス)
通所介護(デイサービス)の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 | 要介護1~5 |
おすすめの人 |
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通所介護(デイサービス)は、日帰りで施設に通い、レクリエーションや入浴などの支援が受けられるサービスです。幅広い状態の人を対象としており、次のようなサービスが受けられます。
- レクリエーション
- 集団体操
- 入浴介助
- 食事介助
食事に力を入れている施設や、機能訓練が充実している施設など、事業所によって提供されるサービスが異なります。
デイサービスの主な目的は、要介護者に交流の機会を設けて、社会参加を促進することです。在宅で介護が必要になった人は、家にこもりがちになって人とかかわる機会が減少しがちですが、レクリエーションや集団体操などを通して他者と社会的なつながりを築けば、精神的な健康にもつながり、認知症の進行を遅らせる効果も期待できます。
また、デイサービスには、介護者の負担を一時的に軽減する役割も。デイサービスに行っている間は、施設のスタッフが介助を行ってくれるため、介護に時間を取られることがありません。定期的な利用ができるため、家族の負担軽減に効果的です。
通所リハビリテーション(デイケア)
通所リハビリテーション (デイケア)の概要 |
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サービス内容 |
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対象者 | 要介護1~5、要支援1・2 |
おすすめの人 |
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通所リハビリテーション(デイケア)は、日帰りで病院や施設に通い、専門知識をもったスタッフによる施術や指導を受ける介護サービスです。継続的なリハビリテーションが必要な人や、日常生活の自立度を向上させたい人を対象としています。
リハビリテーション以外の時間は、デイサービスと同様にレクリエーションや入浴介助などを実施。必要に応じて、看護師による医学的なケアも行われます。
デイケアの主な目的は、身体機能の維持と自立度の改善です。在宅生活を送る高齢者は体を動かす機会が少なく、徐々に筋力や体力の低下が生じていきます。デイケアでは、理学療法士や作業療法士から専門的な施術を受けることによって、心身機能を維持させるのです。
また、デイサービス同様に、入浴介助をはじめとする様々な介護が受けられるのもポイント。デイケアに通っている間は家族が介護から離れられるため、負担軽減にもつながります。
地域密着型通所介護
地域密着型通所介護の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 |
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おすすめの人 |
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地域密着型通所介護は、利用者が日帰りで施設に通い、様々な介助や生活機能訓練が受けられるサービスです。事業所と同じ地域に住んでいて、要介護1以上の人が対象になります。
提供される支援は、デイサービスとほとんど同じですが、利用者の人数が少ないのが特徴。18人以下の少人数にサービス提供しているため、通所介護よりも手厚いケアが受けられます。また、看護師が常駐しているため、必要に応じて医学的な処置も可能。常に介助が必要な方や、少人数で交流したい方におすすめのサービスです。
療養通所介護(療養型デイサービス)
療養通所介護(療養型デイサービス)の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 |
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おすすめの人 |
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療養通所介護(療養型デイサービス)は、レクリエーションや日常生活支援に加えて、看護師による医学的な処置が受けられるサービス。難病やがん末期など、重度の要介護者が対象です。
療養型デイサービスの特徴は、介護度の高い人や専門的な医療ケアが必要な人も利用できること。看護師が常駐しているため、緊急時の対応も可能です。一般的なデイサービスでは対応が難しい方でも、療養型デイサービスなら受け入れられます。通常のデイサービスでは、利用者に対する看護師の数が限られているため、重い病気をもつ方は対応できないことも。しかし、療養型デイサービスは、18人以下の利用者に対して複数人の看護師がついているため、常時医療ケアを提供できるのです。
認知症対応型通所介護(認知症対応型デイサービス)
認知症対応型通所介護 (認知症対応型デイサービス)の概要 |
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サービス内容 |
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対象者 |
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おすすめの人 | 認知症で他のサービス利用が難しい人 |
認知症対応型通所介護(認知症対応型デイサービス)は、認知症の診断を受けた方に対して、日帰りで入浴や食事介助などを提供するサービスです。認知症対応型通所介護では、認知症に関する知識のあるスタッフが対応するので、利用者間やスタッフとのトラブルが生じにくいのが特長。そのため、一般的なデイサービスでは受け入れが困難な症状の人でも受け入れ可能です。
また、認知症対応型通所介護は1日の利用者数が12人以下と、利用者が少人数。サポートが手厚く、認知症専門のプログラムも実施されています。
宿泊して受けられるサービス(宿泊型サービス)
宿泊型サービスでは、短期間施設に入所して、日常生活の介助を受けられます。
短期入所生活介護(ショートステイ)

短期入所生活介護(ショートステイ)は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに短期間宿泊ができるサービスです。日常生活を送るのに介助が必要で、1人で生活するのが困難な人が対象。
最大30日間の宿泊が可能で、宿泊中は食事介助や入浴介助を中心とした生活援助が受けられます。
短期入所生活介護(ショートステイ)の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 | 要介護1~5 |
おすすめの人 |
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ショートステイの主な目的は、介護者の負担軽減です。家族が一定期間介護をしなくても良いため、心身の休息につながります。また、最も利用されることが多いケースは、家族の出張や冠婚葬祭で介護者が家にいられないときです。要介護者が必要な生活介助を受けられなくなってしまうため、ショートステイを利用します。
また、ショートステイは退院直後など、自宅の環境が整うまでの間に利用されることも。自宅に介護ベッドや福祉用具の準備が整うまで、つなぎの期間にショートステイを利用することもできるのです。
短期入所療養介護
短期入所療養介護の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 |
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おすすめの人 |
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短期入所療養介護は、一時的に施設に入所し、日常生活援助や医療ケアを受けられるサービスです。介護者なしで生活するのが難しく、医学的な処置が必要な人が対象になります。入所中に受けられるサービスは、以下の3つです。
- 日常生活の援助
- 看護と医療ケア
- 機能訓練(リハビリテーション)
入所中は、ショートステイと同様に、日常生活を送るうえで必要な支援を受けられます。食事介助から着替えの手伝いまで支援内容は様々。入浴介助は宿泊日数によって利用できない施設もあるため、あらかじめ確認しておく必要があります。
ショートステイとの一番の違いは、医師や看護師による医療ケアが受けられることです。胃ろうやストーマ(人工肛門)など、定期的な医療ケアが必要な場合、生活援助しか行えないショートステイは利用できません。そのため、がん末期の方や要介護度の重い方は、短期入所療養介護の対象になります。
また、利用者の状況によっては、機能訓練士による運動指導や訓練を実施。長期間の入所によって身体機能が低下しないように、運動機会を提供してくれます。
訪問・通い・宿泊を組み合わせるサービス
訪問や通所、宿泊などが組み合わさった、複合的なサービスは「小規模多機能型居宅介護」と「看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)」の2つです。
小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護は、在宅介護に必要な支援をひとつの事業所内ですべて受けられるようにしたサービスです。要介護1以上で、サービスを提供する事業所と同じ市区町村に住んでいる人が対象になります。
小規模多機能型居宅介護で提供されるサービスは、大きく分けて以下の3つです。
- 訪問(ホームヘルパー)
- 通所(デイサービス)
- 宿泊(ショートステイ)
小規模多機能型居宅介護では、通所(デイサービス)を中心に提供されますが、要介護者の状況や希望に応じて、訪問(ホームヘルパー)や宿泊(ショートステイ)のサービスも利用できます。
小規模多機能型居宅介護の概要 | |
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サービス内容 |
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対象者 |
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おすすめの人 |
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小規模多機能型居宅介護の一番の特徴は、ひとつの事業所と契約するだけで在宅介護に必要な3つのサービスをすべて受けられること。当初デイサービスのみを利用していた人が、訪問や宿泊も利用しなければならなくなった場合でも、同じ施設のスタッフがサービスを提供するので、利用者が安心できるメリットがあります。特に認知症の人は、サービス提供者が変わると、環境適応できずパニックになるケースがあるため、なじみのスタッフが対応してくれるのは安心です。
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
看護小規模多機能型居宅介護 (複合型サービス)の概要 |
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サービス内容 |
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対象者 |
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おすすめの人 |
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看護小規模多機能型居宅介護(看多機[複合型サービス])とは、介護と医療を一体的に提供するサービスです。小規模多機能型居宅介護が提供している包括的な介護サービスに加えて、高度な医療ケアを必要な人が対象となります。看護小規模多機能型居宅介護で提供されるサービスは、以下の通りです。
- 訪問(ホームヘルパー)
- 通所(デイサービス)
- 宿泊(ショートステイ)
- 訪問看護
小規模多機能型居宅介護と同様に、在宅介護に必要な介護サービスが提供されます。事業所に看護師が常駐しているため、胃ろうの管理や在宅酸素療法(在宅人工呼吸療法:病院以外の場所で人工呼吸器を使用して酸素を取り込む療法)などの医療ケアにも対応が可能。どのサービスを使う際も、同じ施設のスタッフが行うため安心です。
また、がんや重度の病気による終末期の人など、自宅での看取りに対応しているのも看多機の特徴。終末期の方は、心身の痛みや精神的な不安が在宅生活を送るうえで問題になります。看多機では、看護師による疼痛管理や緩和ケアだけでなく、家族の心理的サポートを行うことで、在宅での看取りをサポート。介護と同時に終末期の緩和ケアも包括的に受けられるのが、看護小規模多機能型居宅介護の特徴です。
生活環境を整えるサービス
在宅介護を行うには、生活環境を整えて、自宅をバリアフリー化する必要があります。生活環境の整備を目的に提供されるサービスは、「福祉用具のレンタル・購入」と「住宅改修費の支給」の2つです。
福祉用具のレンタル・購入

杖や車椅子などの福祉用具も、介護保険制度を利用してレンタル・購入できます。在宅で介護をするにあたって、福祉用具の利用は必須。杖や車椅子だけでなく、介護ベッドなど、在宅介護に様々な福祉用具が用いられます。
在宅介護サービスにおいて、福祉用具に関する介護保険制度は以下の2つです。
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
福祉用具貸与は、介護保険が適用になる福祉用具を、1~3割の自己負担でレンタルできる制度です。すべての福祉用具が対象になるわけではなく、要介護度によって介護保険サービスでレンタルできる器具は異なります。
要介護度別で利用できる福祉用具 | |
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レンタル可能な福祉用具 | |
要介護4以上 | 自動排泄処理装置 (排泄物を感知して自動で吸引する装置) |
要介護2以上 |
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要支援1以上 (介護度に関係なくレンタル可) |
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手すりやスロープなど、住宅改修をしなくても簡易的に取り付けられる器具のレンタルも行っています。どの福祉用具を導入すれば良いのか迷ったら、ケアマネジャーや理学療法士などの専門職に相談するのがおすすめです。利用者の心身状態や家庭の経済状況など、様々な要因を考慮して最適な福祉用具を提案してもらえます。
福祉用具のなかでもポータブルトイレや入浴補助装置など、肌に直接触れる福祉用具はレンタルできませんが、「特定福祉用具販売」によって、介護保険適用の価格で購入可能。購入できる福祉用具は、以下の通りです。
- 腰掛便座
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具の部分
費用は購入費の1割負担で、年間10万円まで支給されます。上記の福祉用具は、使用する人や機会が限られるため、購入前に必ずケアマネジャーに相談しましょう。
住宅改修費の支給
在宅介護では、転倒などを防ぐため、段差の解消や手すりの設置など、自宅のバリアフリー化が必要です。その際、住宅改修に必要な費用は、年間20万円までであれば、費用負担が1~3割で済むように補助金が支給される制度があります。よく行われる住宅改修の内容は、以下の通りです。
- 手すりの設置(階段や廊下など)
- 段差の解消(玄関や敷居など)
- トイレの洋式化
- 扉の取り換え(引き戸、ドアノブ交換など)
- 床材の変更(車椅子の走行円滑化)
介護を受ける人の状態によって、どのような住宅改修を行うかは変わります。最も多い改修内容は手すりの設置で、玄関や階段などを中心に行われる場合が多いです。
介護保険外サービス

在宅介護サービスのなかには、保険適用にならないサービスも。サービス内容は、介護保険で対応できないニーズに応じたものが多く、「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」と「介護保険外サービス」の2つに分けられます。
- 1介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)
-
介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)は、介護が必要な状態に陥るのを避けるために提供されるサービス。要支援1・2の方や、高齢者の介護予防が目的です。機能訓練や生活援助のように、利用者と直接やりとりする活動だけでなく、介護予防に関する活動の普及や支援も行っています。
支援の内容は大きく分けると、「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」の2種類です。介護予防・生活支援サービス事業では、要介護の人が受ける支援と同じようなサービスが提供されます。
介護予防・生活支援サービス事業
の分類サービス 内容 訪問型
サービス掃除・洗濯などの日常生活支援 通所型
サービス機能訓練や日常生活支援、交流の提供 その他の
生活支援サービス栄養改善を目的とした配食、一人暮らしのご高齢者の見守りなど 介護予防
ケアマネジメント総合事業によるサービス等を適切に提供するためのケアマネジメント 一方、一般介護予防事業は社会参加を促すことで介護予防を行います。具体的な活動内容は以下の通りです。
- 体操教室
- ボランティア
- 介護予防に関する講演会
- 趣味などのサークル活動
- 2介護保険外サービス
-
介護保険や医療保険が適用になるサービス以外に、在宅介護をするうえで役に立つサービスが多数あります。
- 配食・宅食サービス
- 見守りサービス
- 旅行・外出支援サービス
- 家事代行
- 訪問理美容
- おむつの支給
- 就労機会の提供
介護保険外サービスは、主に要介護認定されていない人や、保険適用のサービスでカバーできない支援を求める人に提供されています。例えば、介護保険が適用になる訪問介護では、利用者本人に関係のない庭の手入れや掃除、食事の準備などが行えません。しかし、保険外サービスの家事代行であれば、生活全般の家事や雑務を行ってもらえます。特に、趣味や娯楽の分野は介護保険で対応できないため、家事代行は非常に便利です。
介護保険外サービスは制限が少なく便利な反面、費用が全額自己負担になる点が要注意。自治体によっては介護保険外のサービスに助成金が出ることもあるため、ケアマネジャーや役所に確認してみましょう。
要支援の方は「介護予防サービス」を利用できる
要介護申請をして、要支援と判定された人は介護予防サービスを利用できます。要支援とは、立ち上がりや起き上がりなど、日常生活に一部介助が必要な状態。介護予防サービスは、本格的な介護が必要な状態に陥るのを予防するサービスです。
介護保険の区分 | サービス名 | |
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訪問型 | 介護予防訪問介護 | 介護予防訪問入浴介護 |
介護予防訪問リハビリ | ||
介護予防訪問介護 | ||
介護予防居宅療養管理指導 | ||
通所型 | 介護予防通所介護 | 介護予防通所リハビリ(デイケア) |
短期宿泊 | - | 介護予防短期入所生活介護 (ショートステイ) |
介護予防短期入所療養介護 (医療型ショートステイ) |
在宅介護サービスを利用する方法

在宅介護サービスは、以下の流れで利用可能になります。それぞれの具体的な内容や注意点についてみていきましょう。
- 1要介護認定を申請する
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役所の介護保険窓口か、地域包括支援センターで要介護認定の申請を行います。要介護度とは、日常生活を送るのに、どれだけの支援が必要になるかの指標です。申請内容をもとに調査を行い、要介護度が決まります。申請時に持参する物は、以下の通りです。
- 介護保険被保険者証
- 身分証明書
- マイナンバーカード
- かかりつけ病院の診察券
持参した物をもとに、申請書を記入して提出します。要介護の認定調査を行う際に、「主治医意見書の依頼」が行われるため、主治医の氏名や医療機関の記入が必要。申請を行う役所や地域包括支援センターは、住民票がある市区町村に限定されるため注意しましょう。
- 2ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談
-
申請内容とそのあとに行う訪問調査の結果に基づいて、要介護度が決定。申請から30日以内を目途に、認定結果が通達されます。要介護度によって受けられる介護サービスの範囲が決まるため、適正な介護度になっているかを確認しましょう。
要介護認定を受けたあと、介護サービスの利用を希望する場合は、介護サービス計画書(ケアプラン)の作成が必要です。ケアプラン作成の相談・依頼は、介護度によって相談場所が異なります。
- 要支援1・2:地域包括支援センター
- 要介護1~5:居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)
居宅介護支援事業者に依頼して作成する場合は、要介護者と家族がケアマネジャーと面談を行い、必要な介護について相談します。相談内容に基づいて、内容やスケジュールを調整。利用者の意向や課題、目標を考慮して、介護サービスの原案を作成します。
- 3ケアプランを作成し、サービスを利用する
-
ケアプランの原案を作成したのち、サービス担当者会議が行われ、ケアプランが完成となります。その後、実際にサービスを開始し、利用するなかで困ったことや疑問点がある場合には、担当のケアマネジャーに連絡することになるのです。その後も、要介護度が変更された場合や、ケアプランが合っていない場合は、随時ケアプランの見直しを行います。
在宅介護サービスのメリット・デメリット
在宅介護サービスには、押さえておくべきメリットとデメリットが存在します。介護サービスに関する理解を深めて、安心して在宅介護を行えるようにしましょう。
メリット
- 住み慣れた環境で生活できる
- 施設サービスよりも費用を抑えられる
- 家族の介護負担を軽減できる
在宅介護サービスの最大のメリットは、利用者が自宅で生活を続けられることです。住み慣れた環境で暮らすことは、心理的な安定感を提供し、生活の質を向上させます。また、施設入所と異なり、新たな施設や環境への適応が必要ありません。住み慣れた環境でサービスを受けることは、ストレスや不安の軽減につながり、生活の満足度が高まります。
介護施設や施設入居に比べて、在宅介護サービスは費用を抑えることが可能です。施設入居には高い費用がかかり、毎月の介護費用がかさむ傾向に。一方、在宅介護サービスは利用者の実際の必要性に併せて提供され、介護保険などのサポートも受けられるため、費用が削減可能です。
在宅介護サービスは、家族の介護負担を軽減する役割もあります。家族が利用者の介護をすべて担当する場合、身体的、精神的な負担が大きいです。在宅介護サービスを利用することで、家族は介護士や看護師に一部の介護を委託できます。これにより、家族は介護と自分自身の生活を両立させやすくなり、在宅介護による疲弊を軽減できるのです。
デメリット
在宅介護サービスのデメリットは、以下の通りです。
- サービスを受けられない時間がある
- 緊急時やトラブルの対応が遅れる
在宅介護は通常、特定の時間枠内に提供されます。指定の時間帯以外に、利用者の介護が必要な場合、家族が対応するしかありません。特に夜間や週末などにトラブルが発生した場合、一部の在宅介護サービスでは対応が困難です。
まとめ
在宅介護サービスは訪問型や通所型など、それぞれに特徴があります。在宅介護の負担を軽減できる介護サービスは、とても便利。適切な在宅介護サービスを選ぶには、要介護者の状況とサービスの特徴を考慮することが重要です。また、利用者の要介護度によって、使えるサービスは異なります。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターのスタッフに相談すると、適切なサービスを提案してくれるので、積極的に活用してみましょう。